安居(あんご)修行していた僧堂の発行している機関紙に定期的に寄稿しています。今回はお寺の税務調査について寄稿した回の一部を転載したいと思います。
本当に来るの? みなさんの中で自坊に実際に税務調査が来たという方はどれほどおみえでしょうか。これらについて国税庁はその概要を公表しています。https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/hojin_chosa/index.htm
学校法人や社会福祉法人など他の非営利法人も含めて、源泉所得税等に係る調査が4,082件(平成三十年度)実施されています。同資料によれば、非営利法人の源泉徴収義務者数は166,370法人とされており、宗教法人を含めた非営利法人に源泉所得税等に係る調査がある可能性は約2.5%程度だといえます。つまり四十年に一度は入る計算になります。
いかがですか?頻繁に入ることはないけど、絶対に入らないわけでもなさそうだ、といったところでしょうか。ただ、割合の算定の母数になっている法人数には各資料でだいぶ乖離がありますので、参考程度にとらえる方がよいでしょう。
いつ頃来るの? 一概には言えませんが、秋ごろが最も可能性が高いといえます。これは宗教法人に限った話ではなく、一般法人も含めた税務調査全般に言える話で、税務署内の年間スケジュールによるところがあります。
毎年六月末に人事異動があることから、年度初めである七月から書類調査を行い、だいたい九月から十二月にかけて税務調査が行われます。年明け一月から三月は個人の確定申告業務であるため、署外へ出向いての税務調査はほとんど行われないようです。また、真偽のほどは定かではありませんが、四月から六月の税務調査の成果は人事評価に反映されにくく、あまり気が入りにくいことから、件数も少なめだといわれています。
何を調査されるの? お寺の規模にもよりますが、だいたい二人で二日間ほど来ることが多いようです。初日の午前中にお寺の概要などの聞き取りが行われ、その中で、宗教法人の収益と、個人の所得をどのように分けているのかということを中心に聞かれることが多いようです。
例えば、本来個人の家計から支出すべきものをお寺の費用としていないか、という点が頻繁に調査されるポイント①です。庫裡の水道光熱費や子弟の教育費のほか、主に個人的に使用している車両のガソリン代などをお寺の費用として計上している場合がこれにあたります。
また、同安居と行った懇親会やゴルフのプレー代などをお寺の交際費等に計上している場合、「お寺の関係者として」ではなく、「友人として」の行為であるといわれることがあるようです。
さらに、布施収入をもれなくお寺の収益に計上しているかという点も頻繁に調査されるもう一つのポイント②です。
例えば布施袋に御膳料と記載されている場合があります。その場で檀家さんと食事を共にすれば収益に計上すべきものはありませんが、一緒にしなかったために得られた金銭であるからいわゆる布施ではなく、お寺の収益ではないと考えるご住職がみえますが、税務調査ではこれは通りません。名目がなんにせよ(御車代でも同じことが言えます)布施に変わりはなく、布施についてはお寺の収益として計上する必要があります。
その他に、檀家さんは、相続税の申告の際にお寺に納めた葬儀代などは相続財産から控除することができますが、その情報をもとに、その葬儀代が宗教法人の収益に適切に計上されているかという視点で調査されることもあります。
税務調査の際に何をどの程度見られるかというのは、調査官によりまちまちで一概にいうことはできませんが、一様に前述二つのポイント①②をもとに資料の閲覧開示を求めてきます。
どうすればいいの? これ以降はまたの機会にします。